判例紹介

2018年10月20日 (土)

相続分無償譲渡は「贈与」 遺留分請求認める

昨日、共同相続人間でされた無償による相続分の譲渡が「贈与」にあたるとして、相続(遺留分減殺請求)の実務に影響の出る最高裁判決が出ましたので、紹介します。

判決全文が記載された裁判所のHPはこちらです。http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88060

【相続分無償譲渡は「贈与」 遺留分請求認める】
https://mainichi.jp/articles/20181020/k00/00m/040/109000c

 父親の死亡時に、母親が自身の相続する持ち分(相続分)を特定の子に全て無償譲渡したため、母の死亡時に母の遺産を受け取れなかった他の子が最低限度認められる相続の「遺留分」を請求した2件の訴訟の上告審判決が19日、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)であった。小法廷は「相続分の無償譲渡は贈与に当たる」との初判断を示し、他の子が遺留分を請求できると認めた。裁判官4人全員一致の判断。

 具体的な財産ではない相続分の譲渡が贈与に当たるか否かは、これまで地高裁で司法判断が分かれており、今回が最高裁の統一判断となった。親の一方が死去した際、残る親が同居する長男などに相続分を全て譲渡するケースは少なくないとみられ、今後の相続実務に影響を与えそうだ。

 民法は、遺族の生活を保障するため配偶者と子など直系親族に遺留分を認めている。小法廷は今回、無償の相続分譲渡について譲渡分の財産全体の価値がマイナスになる場合を除き「経済的利益を合意によって移転するもの」と定義した。生前に特定の子に相続分を譲渡した親に財産がなくても、他の子が相続財産に当たる贈与額を基に遺留分を特定の子に請求できることになる。

 今回の2件はいずれも母から遺産を受け取れなかった子らが、長兄を提訴したケース。相続分の譲渡が贈与に当たるか判断が割れていた。

 母の相続分を譲り受けた子は裁判で「相続分譲渡は暫定的な持ち分の移転に過ぎず、財産は遺産分割後に父親から直接相続した。母親からの贈与ではない」と反論していた。【伊藤直孝】

(2018.10.19 21:37 毎日.jp)

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2011年6月17日 (金)

出世払いの借金

皆さんの中には、出世払いの約束で借金した場合に、出世しなければ借金を返さなくてもいいと思われている方もいらっしゃるかと思います。

実は、このことについては、大正時代に大審院(今でいう最高裁判所)の判例(大審院大正4年3月24日判決)があります。

いわゆる出世払いの約束は、法律的には「不確定期限」とされています。

ですから、出世すれば借金を返済しなければならないことはおわかりいただけると思います。

そして、不確定であれ「期限」である以上は、必ず返済しなければなりません。

したがって、この判例で指摘していますが、「出世払い」は「これ以上出世の見込みが無ければ、その時点で全額返済の義務が生じる」ことになります。

出世払いの約束をされている方、頑張って出世して返していきましょう。

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2010年4月27日 (火)

内容証明が届かない場合の到達の効力

内容証明を送ったが「ご不在のため持ち帰り、保管期間が切れたため返送」された場合の到達の効力はどうなるのでしょうか。

この問題につき、遺留分減殺の意思表示が記載された内容証明郵便が留置期間の経過により差出人に還付された事例において、平成10年6月11日の最高裁の判例があるので紹介します。

この判例の結論を簡単に言うと、内容証明郵便が遺留分減殺の意思表示(少なくともこれを含む遺産分割協議の申入れである)だろうと受取人の方で推測がつく状況であれば、到達の効力が認められます。

判例の全文や要旨はこちらをご覧下さい。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=52615&hanreiKbn=01

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